2011/05/26

バイオリーナ



歩いていると、突然、よい香りに包まれる。
顔をあげると、大きな木が目の前にあって、小さな白い花が咲いている。
地面には白い花が、たくさん散らばって、
葉をじっと見ていると、「みかん」だなと思った。

もう一度、深く呼吸をして、香りを吸い込む。
どこからか、蝶がふわりとやってくるような気がした、真昼のこと。

蝶は約一時間後、白いソーサーの、スプーンの上に現れた。
あら、やっぱり!と思った以上に、砂糖となってやってきた蝶の、可憐なこと!
レース糸で編まれたような、そのままブローチになりそうな蝶は、
はるばるフランスからやってきたそうだ。

あまりの繊細さにため息をつきながらも、約束の時間をだいぶ過ぎて、
私はちょっとあわててもいたので、
思い切って、赤い紅茶の中に、蝶を落とした。
「あっ・・・!」
信じられないくらい軽やかに、すっと消えた。

それは、雪が海に落ちて消える速度とか、後悔が身体に沁みわたる速度によく似ていた。
その時私は、後悔などとは反対の気分にあったけれども、
カップの底でしばらく姿をとどめることを、どこかで想像していたらしい。

蝶が消えるまでの、瞬間のような時間が、いまでもありありと私の中にある。
世の中の、何かの速度と、よく似てて、それを探すのが楽しい。
もしかしたら、それを感受性と呼ぶのかもしれないけど・・・。

写真はバイオリーナ。これもよい香り。
外側の花弁を大きく広げて、カップ&ソーサーのような姿。

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